夏を迎える前に知っておきたい、溺水事故について

暖かくなってきて、GWなどの行楽日和には海や川での水遊びを楽しむ方もいるでしょう。そんな外での水遊びについて、注意点や準備すべきことを解説します。
小児科医のおじい 2026.04.25
誰でも

GWや夏休みには、海や川での水遊びをするご家庭も多いんじゃ。また、友達同士で海や川遊びをする機会もあることと思うんじゃ。

しかし、毎年この時期に水の事故による悲しいニュースがあるんじゃ。これらは決して他人事ではなく、いつかわが身にふりかかるものと思って備える必要があるんじゃ。

今回は、屋外での水の事故の発生状況と対策について解説するんじゃ。

1. 水の事故の発生状況

不慮の事故は小児の死因の上位

まずは、水の事故の発生状況について整理するんじゃ。
水の事故による死因は不慮の事故に分類されるんじゃ。不慮の事故は、小児の全年齢において死因の上位TOP5に入るんじゃ。

小児の死因 上位5位まで

小児の死因 上位5位まで

溺水事故は不慮の事故の約2割を占める

また、溺水による死者数は、不慮の事故のうちの約20%を占めるんじゃ。
いずれの年齢においても、不慮の事故に占める溺水の割合は大きく変わらないんじゃ。

不慮の事故の内訳をみると、0歳では圧倒的に窒息が多いんじゃ。
1歳からは溺水が増加してきて、9歳までは半数近くを占めるんじゃ。

不慮の事故による年齢別の死因内訳

不慮の事故による年齢別の死因内訳

小児の溺水事故による死者は年間50人前後

溺水事故による死者数は、年間50人程度で推移しているんじゃ。
令和の今も決して起こりえない事故ではないんじゃ。

こども家庭庁 不慮の溺死・溺水の死亡者数

こども家庭庁 不慮の溺死・溺水の死亡者数

2歳までは浴槽での事故、5歳以上は海や川での事故が多い

溺水事故の年齢別場所をみると、全体では2歳までは圧倒的に浴槽での事故が多いんじゃ。
小学生以上になると、プールや自然水域での事故が増えてくるんじゃ。

死亡事故は1歳までは浴槽が多く、2歳以降では自然水域での溺水が増えてくるんじゃ。
4歳以降では自然水域での溺水がもっとも多くなるんじゃ。

溺水事故の年齢別発生場所

溺水事故の年齢別発生場所

溺水事故の発生状況まとめ

・2歳まではほとんどが浴槽で起きている
・3歳以降はプール、ビニールプール、自然水域でも起きている
・小学生以上は自然水域が最多
・死亡事故は2歳以降は自然水域でも起きている
・5歳以降は自然水域が最多

***

2. 人が溺れるときの真実

人が溺れるときは、「助けを呼ぶ声や水音で気づく」と思われがちじゃ。
しかし、実際には人は声も出さず、音もたてずに静かに溺れるんじゃ。

子どもは静かに溺れます

子どもは静かに溺れます

実際に、溺水トラブルを経験した保護者の実に86%が、「溺水時に悲鳴や助けを求める声が聞こえなかった」と回答しているんじゃ。

また、溺水事故は2.5cmの深さの水があれば起こりうるとされているんじゃ。
それだけの深さがあれば、子どもの鼻と口がふさがってしまうことは十分にありえるんじゃ。

溺水

溺水

つまり、「音や声で気づけるから目を離しても良い」は誤りじゃ。
お子さんが入浴したりプールで遊んでいるときは、「目を離さない」「目を離すなら水から出す」が鉄則じゃ。

溺水のタイムリミット ~5分が分かれ目~

溺水事故が起きた場合、溺水時間が5分以内であれば90%が後遺症なく回復したという報告があるんじゃ(3)。

参考文献(3):辻 聡, 小児内科 2021; vol 53 増刊: 1085-1088.

つまり、5分以内に発見、救助できるかどうかが肝心じゃ。

***

3. 家庭内での水の事故

2歳未満はほとんどが浴室の事故

2歳以下は、家庭内での溺水事故、特に浴室での事故が最も多いんじゃ。
未就学児のいるご家庭へのアンケート調査では、5人に1人が『浴室での溺水トラブルを経験した』と回答しているんじゃ(1)。

目を離したわずかな時間で事故が起きる

入浴中の事故では、保護者が目を離したわずかな時間で事故が起きていることも少なくないんじゃ。
以下の図は、事故の際に保護者が目を離した具体的な状況じゃ。

入浴中に保護者が目を離した具体的な状況

入浴中に保護者が目を離した具体的な状況

主な事故事例

事例1:保護者と入浴中、保護者が 10 分ほど浴室を離れていたところ、仰向けで浴槽に浮かんでいるのを保護者が発見した。意識・呼吸がなく、胸骨圧迫を開始した。(4歳男児)

事例2:保護者と入浴中、保護者が洗髪のため約1分間目を離している間に水没。保護者が気付くと頭部を下に、体を横に向けた状態で完全に顔面を水につけた状態で浮いていた。すぐさま浴槽から引き上げたが、反応がなく、呼吸が停止していた。保護者が人工呼吸を行ったところ、多量の水を嘔吐。また心拍が確認できなかったため胸骨圧迫を実施。 (2歳男児)

事例3:入浴のために首に浮き輪をつけ浴槽に浮かべていた。5分ほどして、保護者が脱衣所から浴室に戻ると浴槽の底に沈んでいた。硬くなり呼吸もしておらず、別の保護者が胸骨圧迫を開始し救急要請している間に泣き出した。 (0歳男児)

首浮き輪の使用に注意

よくSNSでは、首浮き輪を使用しながら入浴している写真が投稿されているんじゃ。
しかし、これはとても危険な使い方じゃ。

首浮き輪はプレスイミング用の遊具であり、入浴補助具ではないんじゃ。
実際に、入浴中に首浮き輪を使用しての溺水事故が複数報告されているんじゃ。

入浴中に首浮き輪を使用する、特に目を離すために首浮き輪を使用するのは大変危険なのでぜひ注意してほしいんじゃ。

消費者庁 入浴補助の「便利グッズ」ではありません - 首浮き輪で死亡事故も -

消費者庁 入浴補助の「便利グッズ」ではありません - 首浮き輪で死亡事故も -

入浴時以外の溺水事故

入浴時以外の家庭内での溺水事故としては、以下のようなケースがあるんじゃ。

・洗濯機を覗き込んで転落
・洗面器、バケツなどを覗き込んで転落
・トイレの便器を覗き込んで転落し、頭がはまり込む

Geminiで作成

Geminiで作成

家庭内での溺水事故を防ぐには

浴室・浴槽
・入浴中は子どもから目を離さない
・子どもだけで浴室に入れさせない、入浴させない
・大人が洗髪する際には、子どもを浴槽から出す、歌を歌ってもらうなど安全を確保する
・子どもは大人の後に浴室に入れて、先に浴室から出す
・入浴後は浴槽のお湯を抜く
・浴室にベビーゲートや扉上部のロックを設置する
・浴槽の蓋に子どもを乗せない
・首浮き輪を入浴補助用具として使用しない
浴室・浴槽以外
・洗濯機、洗面器、バケツなどに水をためたままにしない
・洗濯機にチャイルドロックをつける
・トイレの便器の蓋を閉める

Geminiで作成

Geminiで作成

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4. 屋外での溺水・水難事故

すでに述べたように、年齢が上がるほどプールや海、河川など屋外での溺水事故が増加するんじゃ。
また、水遊びをする場所以外のため池や用水路などでも溺水事故は起きているんじゃ。

海、河川での事故状況 ~河川が最多~ 

公益財団法人 河川財団:No more 水難事故

公益財団法人 河川財団:No more 水難事故

屋外での水難事故のうち、多くは河川や湖沼で起きているんじゃ。
2000年代の子どもの水難死亡事故の約6割は河川・湖沼での事故で、海での事故の2倍以上じゃ。

海での溺水事故の8割が遊泳もしくは釣り中の事故じゃ(2)。
特に釣り中はライフジャケットの装着率が20%未満と低く、死亡や行方不明にいたってしまうケースが多いんじゃ。

「水の中」だけでなく「水辺」も危険

公益財団法人 河川財団:No more 水難事故

公益財団法人 河川財団:No more 水難事故

水難事故は、水の中に入らなくても起きるんじゃ。
水難事故の実に3割がキャンプやバーベキューなど、水に入らない活動の中で生じているんじゃ。

水遊びをしないから溺水・水難事故の恐れがないわけではないんじゃ。

水辺は「滑る」から危険

公益財団法人 河川財団:No more 水難事故

公益財団法人 河川財団:No more 水難事故

なぜ水辺が危険なのかというと、それは「滑る」からじゃ。
水辺で事故になりかけた「ヒヤリハット」事例を集めると、「滑る」「足をすくわれる」「落ちる」が上位にあり、特に「滑る」は飛びぬけて最多なんじゃ。

水遊びや水辺での活動では、足元の装備を整えることが非常に重要であることがわかるんじゃ。

屋外での溺水・水難事故の対策

①ライフジャケットの着用

ライフジャケットの着用は、屋外での水遊びでは必須じゃ。
水に入る遊びをする際だけでなく、釣りや河辺でのBBQなど不測の事態で海や川に落ちる可能性がある場合もライフジャケットは着用すべきじゃ。

公益財団法人 河川財団:No more 水難事故

公益財団法人 河川財団:No more 水難事故

公益財団法人 河川財団:No more 水難事故

公益財団法人 河川財団:No more 水難事故

ライフジャケットがあることで、顔が水面から出て呼吸が確保できるんじゃ。
また、状況に応じて岸に向かって泳ぐ(アグレッシブスイミング)、その場で浮いて待つ(ディフェンシブスイミング)ことができるんじゃ。

購入が難しい場合は、ライフジャケットのレンタルサービスを利用することもできるんじゃ。

②踵のある水遊び用の靴の着用

前述のように、水遊びや水辺では「滑る」ことが非常に危険なんじゃ。
そのため、踵のある滑りにくい靴を履くということが重要な対策じゃ。マリンシューズ、リバーシューズ、ウォーターシューズといった靴が理想じゃ。
ビーチサンダルは、滑りやすく脱げやすいため不適切なんじゃ。

③情報収集

海や川など水辺で遊ぶ際は、前日・当日の気象情報、河川の水量、波の高さ、風向き・風速などを事前に情報収集しておくんじゃ。
また、遊びに行く場所の立ち入り禁止区域、遊泳禁止区域、水難事故の起きた場所なども事前に確認しておくとええんじゃ。

④大人は下流で見守る

公益財団法人 河川財団:No more 水難事故

公益財団法人 河川財団:No more 水難事故

川遊びをしている子どもを見守る際に、大人が岸や上流にいると流されたときに間に合わないんじゃ。必ず、ライフジャケットを着用した大人が下流で見守るようにすることが大切じゃ。

⑤流されたものを追いかけない

流されたサンダルや帽子を追いかけて水難事故に遭う、というのは河川などでよくあるケースです。

「物が流されても、追いかけない」という約束を親子で共有しておくことが大切じゃ。

「サンダルバイバイ」というプロジェクトをぜひ知ってほしいんじゃ。

サンダルバイバイ おやこ条約

サンダルバイバイ おやこ条約

⑥流された時の対応を知る

公益財団法人 河川財団:No more 水難事故

公益財団法人 河川財団:No more 水難事故

ライフジャケットを着用している前提で、もしも流されてしまったらどうすればいいかを知っておくことも大切じゃ。

  • 無理に立とうとしない

  • 元いた場所に戻ろうとしない

  • 流れの緩やかな場所へ移動する

以上の3つが原則じゃ。

⑦「飛び込んで助ける」は危険

公益財団法人 河川財団:No more 水難事故

公益財団法人 河川財団:No more 水難事故

周りの人が溺れたり流されたときに、飛び込んで助けるのは最もリスクの高い救助法じゃ。
救助者が水難事故に合うことを二次災害と呼ぶが、飛び込んで助けに行った場合は約14%で二次災害が発生しているんじゃ。

可能であれば、浮き輪、スローロープなどによって陸上から救助を試みることが望ましいんじゃ。

公益財団法人 河川財団:No more 水難事故

公益財団法人 河川財団:No more 水難事故

屋外での溺水・水難事故を防ぐには

・海、川で遊ぶときはライフジャケットを着用する
・バーベキュー、釣りなど水に入らない活動でもライフジャケットを着用する
・こどもだけで海、川、用水路、ため池などに近づかない
・足元は踵のある滑りにくい靴を着用する
・事前に気象情報、危険区域の地理情報などを確認する
・川遊びの際は、ライフジャケットを着用した大人が下流で見守る
・流されたときは立とうとせず、流れの緩やかな場所へ移動する
・「飛び込んで助ける」は最終手段であると知る

Geminiで作成

Geminiで作成

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5. 救命処置

溺水・水難事故が発生した際は、ただちに救命処置を行う必要があるんじゃ。

  • 本人と救助者を安全な場所へ

  • 意識があるかを確認

  • 意識がなければ人を呼ぶ、119番通報をする

  • 心肺蘇生を開始

日本医師会 救急蘇生法

日本医師会 救急蘇生法

お役立ち資料

溺水事故 まとめ

ここまで、溺水事故について解説してきたんじゃ。
溺水事故は死亡者こそ少ないものの、重大な事故の陰には500-600倍の未然の事故があるとされているんじゃ。

家庭内の事故は日常の習慣の中にリスクがひそんでいることが多いため、今回の記事を読んで今一度ご自宅の環境を見直してほしいんじゃ。

屋外での事故では、ライフジャケットやマリンシューズなどの備え、気象情報や地理情報などの備え、いざという時の対応への備えが大切じゃ。

GWや夏休みの行楽シーズンを楽しく過ごすために、この記事がお役に立てば幸いじゃ。
それでは、また次の記事でお会いできることを楽しみにしているんじゃ。
最後までお読みいただきありがとうございます。

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